「Bush Lied, My Son Died」~移民父さんフェルナンドの反戦活動、その深い深い意義。
「エスコンディード」はスペイン語で「Hidden」という意味だと教えてくれたのは、同行したカメラマンのHさん。まさにその通り。写真のように、四方を岩山に囲まれた町にやってきた。カリフォルニア州エスコンディード。東海岸のワシントンDCから飛行機に乗り、西海岸のサンディエゴまで5時間のフライト。サンディエゴからは車で30分のドライブである。名前から想像できる通り、メキシコからやって来た濃~いヒスパニック人口が住んでいる。町のラティーノ人口は4割を超える。Hカメラマンもメキシコからの移民で、この取材にはうってつけ。
Jesusと綴れば、普通はキリスト教の神様を意味する”ジーザス”と発音する。しかし、この若い海兵隊員のファーストネームは、”ヘイスース”と読む。神を意味する名前が神に好かれたのか、20歳の若さで2003年3月27日戦死。この岩山に囲まれた町からイラクに出征し、戦争開始からたった一週間後に、あろうことか、アメリカ軍のクラスター爆弾を誤って踏み、その傷が元で亡くなった。
ヘイスースの父、フェルナンド・スアレス・デル・ソーラさんは、51歳。95年にメキシコのティワナから、アメリカ・カリフォルニア州サンディエゴに、一家で移民した。セブンイレブンの店員や、新聞配達などをして家計を支え、ヘイスースほか3人の子供を育て上げた。
「息子が死んだ翌日、知らせに来た海兵隊員は”ヘイスースは頭を撃たれて死んだ”というだけだった。”公式”の死亡証明書には”hostile action, shot in the head”とある。軍は、ヘイスースの遺体が葬式の為に帰って来たときにも”頭を撃たれていて、顔の損傷がひどいので、棺は開けないほうがいい”と言ったんだ。しかしその3日後に、ABCニュースのアンカー、ボブ・ウッドルフがやって来て、
”サー、誰かがあなたにうそをついていますよ。あなたの息子さんは戦闘で亡くなったのではなく、アメリカ軍の誤射か、アクシデントで亡くなったのです(Sir, someboday lied to you, your son didn’t die in the combat..It is the friendly fire or accident.)と言うんだ。。ABCのクルーがが、ヘイスースはアメリカ軍のクラスター爆弾を踏み、救護を2時間待って死んだと知らせてくれた。」
何ということ。
フェルナンドは、議会やペンタゴン、ヘイスースが所属していた海兵隊の基地にも手紙を送り、真実を教えてくださいと訪ねた。しかし、4年以上たった今も答えは帰ってこない。
フェルナンドは、2003年12月にABCニュースのクルー、ウッドルフと共にイラクへ。ヘイスースが命を落とした現場を訪ねた。号泣するフェルナンド。しかし、悲しみにも増して、その時に見たイラクの子供達のイナセントな瞳が忘れられなかった。
「息子、ヘイスースはこの子供達を助けるために、イラクに行ったと思いたい。」ブッシュ政権のついた、「大量破壊兵器」なんていう嘘のために、侵略に行ったんじゃない。。2度、3度にわたるイラクへの訪問で、こうした思いを強めたフェルナンドさんは、当時営んでいたクリーニング屋の仕事も辞め、反戦活動家に身を転じることになった。
反戦の意思を広め、イラクの子供に医薬品を届けるプロジェクト、Guerrero Azteca Project を立ち上げたフェルナンドさん。Guerrero Azteca は、「アステカ帝国の戦士」という意味で、亡くなった息子、ヘイスースをたたえるために、つけられた名前である。
「いまだにアメリカ軍から回答がないのは、あなたが移民だからという理由もあると思いますか?」こう聞くと、「可能性はある。アメリカ政府は、移民たちは沈黙を保つと思っているんだ。でもわたしは違う。」
フェルナンドは、こうも語る。
「ヘイスースはメキシコ・ティワナのドラッグ問題を重く見て、麻薬捜査官になりたいという夢があった。ある日、高校生のヘイスースに、海兵隊のリクルーターが接近して”DEAになりたいなら、マリーン(海兵隊)になるのが近道だよ。”とささやいたんだ。リクルーターは、軍隊の真実は決して言わず、甘いことを言って高校生に近づく。特にヘイスースは、メキシコ市民のまま、マリーンに志願し、メキシコ市民のまま、戦死したんだ。」
ヘイスースの例は、以前にも書いた、「グリーンカード兵」という問題を如実に現している、といえる。フェルナンドによると、アメリカ市民権を持たない移民の若者に、アメリカ軍のリクルーターは
「学費を出してあげる」「グリーンカードさえあれば軍に入れるんだよ。その後、アメリカ市民になれる近道だよ」
という2つのポピュラーな誘い文句を言い、近づくのだという。
「さらに、移民の中にも”白人社会になじめない”という引け目があるのさ。ラティーノの移民社会は、レスペクトもアクセプタシオン(フェルナンドのスペイン語訛りが強い英語。Acceptionのこと) もない。アメリカ軍の制服を着ることで、こうしたものをすぐに得ることが出来る、と思い込むんだよ。」とフェルナンド。写真はエスコンディードの街中どこででも食べられる、メキシカン。フィッシュのタコスやエンチラーダが、そりゃあ新鮮でうまかった。
しかも、軍に入るのはアメリカ市民権への近道、というのは大きな嘘だという。軍人だから、市民権がすぐに得られるかの保証はなく、「普通の人と同じで、申請してから最低5年待たなければいけない。」そう。
しかも、ヘイスースの場合、アメリカ市民権が欲しいから軍に入ったわけではなかった。
「なぜかって、父であるわたしが、すでに公募でアメリカ市民権を得ていたんだよ。アメリカ市民の家族は、優先的に市民権に応募できるはずだったんだからね。でも、18歳のヘイスースはなぜか”今はいい”と、アメリカ市民になることを嫌がった。」
さらにフェルナンドによると、グリーンカードしか持たない兵士達は、イラクの最も最前線に立たされる可能性が高い。「ヒスパニック兵の致死率は、そのほかの人種の兵士に比べると15%も高い。」
>本当だとしたら、怖いこと。
今、フェルナンドが「アステカ帝国の戦士」プロジェクトを通じて提唱しているメッセージは
「反戦」と「平和」と、実はもう一つある。
それは、「移民の若者よ、安易にアメリカ軍のリクルーターの勧誘に乗らないで」、というものだ。
「移民の多いアメリカ国内のいろんな高校を講演して回った。ヘイスースに何が起きたかを話すんだ。先生や、生徒に、アメリカを守り、新しいイラクという国を祝うためのベストな方法は、イラクに赴き武器や爆弾を使うことじゃなく、自分が本を読んだり、教育を受けることなんだ、と伝える。”軍に入隊する見返りに、学費を出してあげるから”という軍のリクルーターの甘いささやきには、断固としてノーと言え、と伝えるんだ。学費というインセンティブは、奨学金で補えばいい。”全国の奨学金リスト”というものを移民の高校生に渡し、軍隊に安易に入らないよう、繰り返し伝える。I tell them there is better future than military。」
それでも、アメリカ軍には現在4万人を超える「移民兵」が所属している。なぜなのか?
「This country is very confused.」とフェルナンドは答えた。「わたしがやっている反戦活動を、メキシコからの移民仲間は、決して良く思っていない。我々を受け入れてくれるアメリカ合衆国のやっていることに、大統領のやっていることに、異議を唱えるなって、ね。でもわたしには、しゃべる権利がある。ブッシュの嘘のせいで、息子が死んだんだからね。」
フェルナンドは、ヘイスースの死後、ヘイスースの母親である妻と離婚。残った2人の娘、ヘイスースの妻も、フェルナンドの反戦活動には、姿を現さず、活動自体を支持していない。「Family devide. When my son died, it destroyed our family. 」とこともなげにいいながら、あすの反戦集会のスピーチ原稿を書くフェルナンド。今は、2003年戦争初期からの反戦活動家として、悲劇のマリーン・ヘイスースの父として、アメリカ津々浦々に名前が知られるようになった。
「ヘイスースの死後に、ヘイスースには海兵隊を通じて、アメリカ市民権が授与された。私は最初”そんなものはいらない”とつっぱねたが、ヘイスースの妻子には重要なもの。彼女が代理で市民権をもらったよ。”息子をメキシコ市民の子供として育てろというんですか。”と反発された。」
じゃあ何のためにヘイスースは死んだんでしょうね、フェルナンドさん?
「Jesus died for peace..I told him you don't need to go to Iraq. Jesus says it is not the war, it is the big power demonstration to Sadam Hussein」
やりきれない思いを反戦活動で昇華させている、熱い反戦父さん、フェルナンドは、この活動をするために英語を学んだだけあって、訛りがかなりきついものの、意思疎通は十分可能。こちらも怪しい日本人なのだから、怪しい英語同士、返って通じ合うのであった。
しかし雑談していて、驚いたことが二つ。
一つは「再婚するんだ。インターネット上で知り合ったのさ。」しかも相手はコロンビア人3人の子持ち。今度アメリカに子供ごと移住しにやってくるのさ。(←色々な意味で大丈夫か?)」
もう一つは「平和団体の招きで、日本を訪問したことがある。驚いたのは、あちこちにエッチな漫画雑誌が売っていること。(レディコミ?)普通の漫画に見えて、本を開けるとあれ~と驚く。あと、電車の中吊りのグラビアにもびつくりしましたよ。」
>うーーん、いいところに気がついてるねえ、フェルナンドさん。でも、日本と日本人はかなり大好き、だとか。ということで、かなり意気投合して、↑ツーショット写真など撮影。
あすは、彼の「ハンガーストライキ式・反戦集会」を夜取材する。24時間固形物を食べないで、座り込みデモをする。あすはヘイスースの命日だから。
「息子が亡くなってから4年も経つのに、この国はまだ戦争をやめない。」がつんと来る一言だった。
(つづく)
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