ダニエル・クレイグの新007に首ったけ!
ジェームズ・ボンドなんて、今まで「ミッション・インポッシブル」のトム・クルーズよりも興味がなかった。
東西冷戦はもう終わって、今は9.11の勃発後、米国を主体としたイラク戦争が起きている一方で、北朝鮮が公然と核実験を行っている時代だ。
女王陛下を守る英国秘密諜報部MI6の秘密スパイなんて、いわば「時代遅れ」で「クールじゃない」はず。。
その私がこんなにはまってしまうなんて。
きょう、2回目の「007 Casino Royale」鑑賞から帰ってきたところで、これを書いている。
そう、私をここまで釘付けにしたのは、もちろん新ボンドのダニエル・クレイグである。
恥ずかしながら、私の右脳にちょこんと付いた「いい男センサー」が、全くこれまでノーマークだった俳優。
当然これまでの出演作品も見たことがなく、この「カジノ・ロワイヤル」が初めて。
しかも私、これまでの007シリーズも、ピアース・ブロスナンの主演作を2本くらい見たかもしれないが、覚えていない、程度。
しかし、ダニエル・クレイグがピアース・ブロスナンの後を継いで、ボンド役に決まった時、英国のボンドファン(主にピアース・ブロスナンを正統派ボンドと信じてやまないひとびと)を中心に、声高な反対運動が起きたことは知っていた。
「Craigisnotbond.com」というアンチ・ウェブサイトまで出来たほどだ。このウェブサイトの主張をまとめると;
「1・ダニエル・クレイグはいままで殺人鬼の役や、悪役ばかりを演じてきた俳優で、そうした役のイメージが強い。
2・しかも英国労働者階級の出身でありブロンドであるという点から、”アッパーミドルクラスの出身でダーク・ヘア”というボンドの身体的描写からもかけ離れている。
3・しかも彼はボンドの”器”ではない。」
というものだ。このウェブサイトの主催者は、新ボンド映画のボイコットを推奨してさえいる。
しかし、しかあしである。
ここまで「役に向いていない」なんて”いじめられている”俳優と知れば、逆に見たくなるのが人間の性(さが)というもの。しかも、そんなに「役に向いていない人」を配役するほど甘くないのが、拝金主義の映画界。儲からない配役はしないはず。他の候補者であるクライブ・オーウェンやら、ヒュー・ジャックマンやら(オージーだけど)並みいる「旬のいい男俳優」を差し置いて、栄光の新ボンド役を射止めたダニエル・クレイグは、これまで映画界で無名に近かった。今まではいわゆる「性格派俳優」とか、「演技派」とか「名脇役」といった称号を得ることが多かった彼が、2006年という新しい時代に、大スポットライトを浴びて演じた大メジャーシリーズの主役。彼自身「ボンドは人を殺すスパイ。実際に人を殺しそうな奴(つまり自分)が演じたほうがいいだろう。」と発言したとか。その父ちゃんまでもが、息子ダニエルのことをメディアへのインタビューで援護射撃したとか。そのダニエル君、いったいどんなボンドだったのか、というと・・・
*ここから先はネタばれ注意*
まずは映画のファーストシーンから。モノクロ・スタイリッシュな、新007の最初の「殺しのライセンス」の実行シーンなのだが、これがトイレでマッチョに格闘しているシーン。
ここからして、今までの「どんなに動いても、ポマードで固めた髪の毛一本乱れない」一代前のブロスナンのボンドとは違う、とはアメリカのある批評家の弁。つまり、ダニエル・クレイグ起用の理由は、”走り込める、素手で格闘できる、テロリストが仕掛けた爆弾を体一つで止められる”いわば「ネイビー・シールみたいな」役柄を作り出したかったから、というわけだ。
以前の007シリーズの「インティメートで、フェミニンで、センシティブな女王陛下の国のスパイ」を知らない私は、このクレイグさんの新ボンド、もろ手を広げて受け入れることができた。等身大で、マッチョで、本当に危険な目に遭ったら守ってくれそうで、共感が出来る。
それに、ある悪口サイトによると「シュレック」に似てる(よく見ると実は似ている。。笑)、などと評されているダニエルの悪役向きの骨太でごつい顔立ち。それすら、映画内では、あのアスレチックでとことんまで絞り込んだ筋肉質のボディーと180cmのタッパに、「釣り合っている」ように見えた。私はあえて、「時代は細面でやわなフェミニン男ではなく、骨太で筋肉質な男を求めている」といいたい派なので、この肉体派ボンド、セクシーで男らしくて個人的に大好きである。
さらに、タイトルバックについて。
トランプをモチーフに、新ボンドダニエル・クレイグの紹介を目的としたアニメーションなのである!思い切ったなあと思う。「ルパン3世のテーマソング」みたいなクリス・コーネルのユーロな主題歌「You know my name」がよくマッチしていて、とてもおしゃれ。「The coldest blood runs through my veins..You know my name.」俺の名はボンド、冷たい血が流れているのさ、てな感じで、女の私もシビレた。
映画中では、アフリカの建設現場やバハマのリゾート地をバックに、よく鍛えこまれた切れのいいクレイグさんのデッド・ランともいえる走りが見もの。
それに、この映画にはもうひとつ、隠されたヒット要素がある。
それは「世界各地のゲイの皆さんが、歴代中最も好むボンド」かもしれない、ということ。それはダニエル・クレイグが以前、画家フランシス・ベーコンの男娼を演じて批評家の賞を受賞したから、ということだけではない。歴代ボンドにはない筋肉質な締まったボディーやハスキーな声を持っているから、というからだけでもない。
ダニエルが「役のためならフル・フロンタルも厭わない。」と言っていたことが、あるゲイ雑誌で茶化されていたが、「カジノ・ロワイヤル」の中には、あるのだ、こともあろうか、ボンドがフル・ヌードで縛られ、悪役のポーカー・プレーヤー、ル・シッフルに縄で拷問を受けるシーンが。
全米封切の次の日の06.11・18。ボストン市内の大映画館。満員のミッドナイトショーでのこのシーンへの反応はどうだったか。私の観察では、観客の半分が「引き」、観客の半分が「身を乗り出して」いた。ボストンがゲイ人口の多い町であることは、言わずもがなである。。
つまり、このダニエル・クレイグの演じる新ボンド、あくまで仮説だが、ゲイ・ホモセクシャルの皆さんにとって大変アトラクティブに描かれているのである。
ちなみにゲイの皆さんのための雑誌「OUT」では、これまでのピアース・ブロスナンのゲイ度が10中0であるのに対し、ダニエル・クレイグのゲイ度は10中11である、と評価している。「ボンドがクローゼットから飛び出した」というわけ。ゲイの皆さんにも受け入れられる、ヘテロだけでなくホモなセクシャルアピールを持っていること。これは現代の映画のサクセスに、必要不可欠な要素であるからして。
とはいえ、もちろん美しいボンド・ガールへの「ヘテロ」な恋愛が、「カジノ・ロワイヤル」でも軸になっている。ボンドの協力者で今作の本気の恋のお相手、英財務省のべスパー・リンドを演じるは、フレンチ女優のエヴァ・グリーン。フレンチのくせに、やけに単純なお名前とは正反対に、繊細な役柄を上手く演じている。しかし、化粧濃すぎ。モードすぎ。でも美人。溺れる瞬間も美しい・・(photo courtesy of EvaGreenWeb.com)
ナイキの跳躍CMで有名なタレントさんがアフリカの悪役を演じているほか、メインとなる賭けポーカーのシーンなどで不気味な存在感を醸しだす北欧出身のマッツ・ミケルセンもよい。
あとは、「俺の時計はオメガ」とか過剰なまでの企業タイアップがうざいけど、仕方ない。映画自体が「ソニー・プリゼンツ」なので、ボンドがMI6にメール連絡するときのパソコンはVAIOだし、べスパーがベニスの風景を撮影するデジカメはもちろん最新のサイバー・ショット。しかし、おなじみアストン・マーチンのボンド・カーだけは心肺蘇生装置が備えらつけられていて、ボンドがマティーニに仕込まれた毒で心臓発作を起こしたときにもフル活躍と、実用的なタイアップ(笑)なのである。
。。といろいろあるものの、私はめったやたらに映画にここまでははまらない。それと同じで、めったやたらに男にもはまらない。個人的にダニエル・クレイグがタイプの男だった、ということもある。
米映画雑誌「premiere」の記事によると、ボンド役に決まったことを知らされたとき、米メリーランド州のホール・フーズというテディもよく行く自然派スーパーで、オーガニック洗剤を買い物していた、というダニエル君。このエピソードを読んで、本当かどうか分からないけれど、「地に足が付いている人っぽいな」という好感を持ったのも確かだ。封切1週目は、ペンギンを描いたアニメ映画の「ハッピー・フィート」に全米興行成績で負けた、ということをメディアに茶化されてもいる。しかし、新しい時代のボンドを目撃する意味で、私はおススメの映画。星は4・5。私にとっては、まさにDaniel Craig IS Bondといえよう。
PS・ダニエル・クレイグの現ガールフレンドは、サツキ・ミッチェルというアメリカの映画プロデューサー(29)。ロンドンプレミアにも同伴で現れているが、サツキという名前、もちろん日系だろうなと思う。詳細(いったいどんな女性なのか興味あり)ご存知の人、おせーて。
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